砂に埋もれた教室 たろぴの森が押し寄せてくる。 モミの木を盗んだので怒ったらしい。（*1） 学校を取り巻く流砂が食い止めちゃいるが、 乗り越えてくるのは時間の問題だ。 学校にもとから生えていた蔦の種族が狂乱して、 壁という壁をおおいはじめた。（*2） そら、羽目板の継ぎ目から、空気の隙間から。(*3) まるで髑髏の内部をうがつ雑草のようだ。 モミの木を盗んできたのは walker 氏である。サンドウォーカー族は短時間なら流砂の上を歩くことができる。 蔦の種族は たろぴの森 の仲間ではないが、先天的に狂乱の因子をもつ。煉瓦の壁などに這い上がり、夜な夜な月の光をもとめて身をもたげるのは、そのせいである。煉瓦の壁はいわば、花壇から隔離された瘋癲病院であると云えよう。 「空気の隙間」？　おかしな表現だと思ったアナタはたぶん正しい。 蔦は旧校舎の時計台まで這い上がる。 ひび割れたガラスから時間の砂がこぼれ落ちる。 はて？　砂時計に蔦の好みそうな針なんぞあったかいな。 いやさ、そもそも時計台に砂時計なんぞあったかいな。 ふと横を見ると、骸骨くんの眼窩から、蔦がはえていた。

−廃校の散歩者− (93/12/29〜31 ホームパーティー「砂嵐の楽園」にて)

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